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アオハルデイズ 本日晴天なり。そんな中何故か薄暗い体育倉庫に閉じ込められている2人の少年。 「えー天気じゃねぇ。何もかんも放り出して遊びに行ってしまいたいわ」 「何もかもというところは同意しかねるが、確かにぼうっとしているのは惜しい天気だな」 「そうかぁ、ただぼーっとしとるのもええと思うんじゃけど‥。眠くなってきたわひざ貸してくれん? 少年のうちの1人はこんな状況にもかかわらずこれ幸いと2人きりの状況を楽しむつもりのようだ。 「やらん‥だいたいだな‥」 少年のうち1人は脱出しようと試みているようだが、段々ともう1人のペースに乗せられてきたようで‥ 「えー真田のケチ」 「ケチではない」 「いけず」 「いけずでもない」 「アホ」 「アホでもない」 「じゃあ何なん?」 「いや何といわれると返答に困るのだが‥」 「ほんじゃあ、お馬鹿で決定やね」 いい様に遊ばれているうちに、脱出しなければならないことなど忘れてしまっている。 「誰が馬鹿だ、誰が。そんな事を言うお前のほうが大馬鹿者だ、このうつけが!!」 「心外じゃね。真田自分が何かもよう分からんっていうから考えてやったのに」 「馬鹿だのアホだのの暴言のどれに自分が当てはまるかなど真面目に自分で考える人間が何処にいる」 「ここ」 「俺を指差すな。俺が馬鹿だというのならお前はなんなんだ」 「考えるまでもないじゃろ。俺には詐欺師って立派な異名があるからの」 「だったら俺にも皇帝と言う異名がある」 「‥ッハハ、自分で皇帝とか言いよった、このおっさん‥いかん、ツボに入った。笑いすぎて腹痛い」 大笑いしている理由の一つが、自信満々に皇帝と言い切ってしまう少年が可愛かったからというのは心の奥底に隠して 「人を指差しながら笑うな!!失礼だぞ!!というか誰がおっさんだ」 「ウハハハハハ」 「いい加減笑い止め!!」 「ウハハハ‥ッハ‥ック」 ひたすら笑い続ける銀髪の少年。 「何時まで笑っているつもりだ、たるんどるぞ!!」 笑われ続けている少年はというと、恥ずかしさのあまり大きな声で銀髪の少年を怒鳴りつける。 顔を真っ赤にして怒鳴っても効果はないと思うのだが‥ 「たるんでるのはお前らだ‥こんなところ何をしている?」 その時体育倉庫の扉が開いて、救世主が舞い降りた。 「蓮二‥!!助かった、いや‥朝一で用事があって入ったら鍵がかかってしまってな」 「いやーうっかり誰かが閉めてしまったらしいわ。 ここ外側からしか開かんから、クッパにつかまったピーチ姫のごとく、助けを待っとったんよ」 「待っていたのはお前だけだ!!一緒にするな大体お前は‥」 「ちゅーても、参謀が来るまで出られんかったんやけぇ待っとったんと変わりないやろが」 「結果ではなく、過程の話をしているのだ!!」 「結果良ければ全て良しっちゅーじゃろ。重要なんは課程じゃなく結果じゃ」 「‥そ‥それも一理あるな」 「じゃろ?」 自分を無視して進められる二人の世界に救世主は眉間に皺を寄せる。 当然だ、この救世主とその仲間たちはこの2人を探していたために部活動の開始が遅れているのだから。 そんな苦労も知らず探していた人間にのん気に夫婦漫才を繰り広げられては、いかに気の長い人間でもイラッと来るだろう。 救世主は苛立ちを理性で抑えて、二人に呼びかけた。 「二人とも俺を無視して話を進めるな‥それから弦一郎、仁王にいい様に丸め込まれているぞ」 「そうなのか仁王?」 「そうといえばそうじゃね」 銀髪の少年は全く反省していないようである。 「‥話は後だ。とりあえずここから出ろ。姿が見えないから皆心配しているぞ」 「そうだな、すまなかった蓮二」 「そりゃ悪かったの。苦労かけたな参謀」 「謝罪は後で皆の前でやってもらおう。全く携帯くらい持っていなかったのか」 「「‥あ」」 救世主の苛立ちは募る。 「‥2人ともその、ポケットの中に入っているものはなんだ‥」 「「‥携帯電話」」 「何故電源を切ってある‥?」 「学校では切るものだろう?」 「アラームがあんまりうるさいんで朝電源切ってそのまま」 ワザとではないのは分かっているが、どちらか一方でも携帯の電源を入れておけば 救世主もその仲間も今頃いつもの様にテニスをしているはずだった。 「‥‥」 「蓮二?」 「参謀殿‥沈黙が怖いんじゃけど‥」 「‥2人とも‥」 何かを抑えるような、救世主の低い声。 自分たちの失態により、救世主が沸点を突破した事を少年二人はひしひしと思い知る。 「「はい」」 「携帯電話の仕組みからきっちり教えてやる‥。部室まで大人しくついて来い」 「「((脱力しすぎて、キレてる!!))」」 部室には救世主より更に沸点の低い強者がわんさと持っている。 自業自得とはいえ、自分たちに待ち受ける試練を想像し、少年二人は同時にため息をついた。 まぁ、それも青春の1ページという事で。 |
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