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夜空に咲いた大輪の花。 赤あく光る星の花。 人々を魅了してやまないその花は、どこかアイツに似ている気がする。 |
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HANA−BI | |||||||||||||
夏休みも終わろうかというある日、珍しく真田から電話がかかってきた。 暇ならば今週末にある部員みんなで花火大会に行ってみないかとのこと。 そういえば、 前に部活の連中と行く予定だった花火大会が雨で延期になったっけ。 確かあの時はブン太と幸村が花火大会へ行きたいと騒ぎだし、真田は「部活の後に遊ぶとはたるんどる」 何てお決まりの台詞を叫んでいた。 そんな真田も泣く子と幸村には勝てなかったらしく最終的には巻き込まれていて、 そして、その口振りとは裏腹に、こいつが結論楽しみにしていたことも、俺は知っている。 他の人間に先を越された悔しさと真田は俺より他のみんなと一緒の方が楽しいのかなぁという寂しさがいっぺんに俺を襲い、 こんな卑屈な考え方をしてしまう自分への嫌悪感も手伝って、 誘おうか、どうしょうか誘ってもいいのだろうかと悩んでいた身にはかなり堪えたのは苦い記憶だ。 「それでどうするのだ、仁王」 「暇じゃしの。ええよ」 「そうか…待ち合わせは……」 ホッとしたような声を隠そうともせず、嬉々として待ち合わせを告げる真田は これで全員揃うことが嬉しいのか 俺が来ることが嬉しいのかどちらなのだろうか? 窓の外から聞こえるはしゃいだ声。 どうやら隣の家では一足早く花火大会が催されているらしい。 花火がもう消えてしまったと泣いているのは、隣の女の子だ。 闇夜に鮮やかに咲き誇った次の瞬間には、すっかり消えてしまう。 花火のそんな儚さは俺たちの関係に似ている気がする。 俺の闇を眩しいほど照らす真田の光は、いつかあの花火のように消えてしまうのではないだろうか。 花火が消えてしまったことを嘆くあの子は未来の俺じゃないだろうか。 いつか1人で、花火を思い出す日がくるのだろうか。 照らすものの無い真っ暗闇の1人の部屋。 何だか無性に泣きたくなった。 |
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