「菊丸、こんなところで寝ては風邪を引くぞ」





暖かい手




優しい声




居心地のいい雰囲気




全てが柔らかく俺を包む。




お願いだから、もう少しこのままで。











ライフ イズ ビューティフル













「まったくしょうがないな」




なんて少し呆れたような声を出しながら、手塚の手が俺の頭を撫でる。
言った台詞こそ呆れたような物言いだが、声の調子で怒ってないことが分かる。



このまま、この掌に身を任せようかな。
そんな風に大切に触られちゃったら、もったいなくて起きれないもん。
次はいつこんな風にしてくれるか分かんないしさ。




仏頂面だの何考えてるのか分からないだのと日常的に言われちゃうくらいには、
感情表現というものを不自然なほど行わない、手塚。






(それでも、女子からするとそのクールなところが堪らないとのこと。良い男は得だね)





パッと見だけではそんな印象をもたれてしまう手塚は、注意深く観察していれば実は感情表現が下手なだけの
案外分かりやすい奴だということが分かる。


手塚の言葉を変に深読みせずに拾っていけば俺って思ってる以上に愛されちゃってんじゃないのと思うことしばしだ。





ちょっと理解するまでに時間の掛かる事が多いけど。






俺何かよりずっと人の気持ちに聡い不二なんかは、甘すぎて胸焼けがするなんて言って時折機嫌が悪いけれど。







でもそれでも、幸せなのでよしとしよう。









じゃなくて









たまには分かりやすい愛情表現をして欲しいわけです。







恋する男の子ですから、自分の大好きで大切な恋人に、言葉じゃ表せない「好き」を貰ったりもしたいわけですよ。






結構恥ずかしい事サラッと言っちゃう割には、恥ずかしがり屋で不器用な手塚は意識しちゃうと未だに手も握ってくれないんだよ。




たまには、手を繋ぐだけじゃなくてぎゅーっと抱きしめられたいし、抱きしめたい。





そんな、愛するもの同士の自然な愛情表現が日常の中に溶け込んでいくのは何時の事なのだろうか。






2人で溶かし込んでいくと思えば、それは何て幸せな事なのだろうと思うけれど
俺はあんまり気が長い方じゃないし、ぶっちゃけ短いし
そんな気の遠くなるような長い時間抱きしめ合えないなんて拷問だよ。






そろそろ、恥ずかしがってないで受け止めてくれれば良いのに。








そんなところも好きだからしょうがないんだけどさ。







あぁ、そんな事考えてる間に頭を撫でる手が止まっちゃった。
かなり残念だけど、ずっとこうしてるわけにもいかないもんなぁ





そろそろ目を覚ますか。





お腹もすいてきたし、一緒に帰りがてらコンビニでも行きたいかも。







そんなことをつらつらと考えつつ、まだ目覚めずにぐずっていると










背中にほんのりと暖かい何かと、ふわりと微かに香る手塚の匂い。











これ、手塚の制服かな?






わー寒い思いをさせるのも悪いけど、この状況はおいしいかも。





なぁ、手塚悪いんだけど、もう後5分だけ寝てていいかな?



5分後にはバッチリ起きるから



そしたら、一緒に帰ろう。











今日のお礼に何か温かいもの驕ってやるな。
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