昨日は昨日でハッピーホワイトデーとか訳の分からん事いいながら部室に乱入してきた。

自由登校なんだから大人しくしとけと言ったら

愛の戦士忍足だから、とか訳の分からない事をいってきた。

誰かこの言語の通じない地球外生命体を何とかしてください。
結構、切実です。





ホワイトデー後日談






「日吉くーん、あーそーぼー」

「間に合っています。お引取り下さい」

独特のイントネーションでアホな呼びかけをしている、伊達めがね。

忍足侑士(15)中学3年生、元男子テニス部。追記:もうすぐ卒業予定。

全く鬱陶しいことこの上ない。
何か用か、わざわざ自由登校中に他人のクラスまで来てまだ、寒い屋上まで拉致って。
全く風邪でも引いたらどう責任取ってくれるというのだ。

何より俺の安らかな昼休みを返せ。


「折角のいい天気やし日吉に逢いたくなって。後放課後デートのお誘い」


目の前の一応先輩は、そんな俺の気も知った風でなくのん気に茶を啜りながらこちらに絡んでくる。
こちらがカリカリしてる分、そののんびり具合が更に癪に障る。
忍足さんなんかのせいで平常心を保てなくなってる自分に更にムカついて
今の俺は穏やかな昼時に相応しくないにも程がある勢いで眉間に皺を寄せているだろう。


「俺は、久しぶりの部活休みを、家で、ゆっくり、過ごす、予定なんです」
大体何処がいい天気なんですか。風は冷たいし、何だか曇ってるし。

自分でも大げさかなと思うくらいに大きなため息をついて返事を返す。

氷帝の練習メニューには確かにオフの予定も組まれて入るがそれはそれ。
そんなものは建前で、休みの日にもコートを使って自主練習をするものは多い。
(というより、そこら辺のテニスクラブよりも施設が整っている上、コーチ陣も榊監督が選びぬいた一流揃いだ。オフの日にも事前に申請しておけば練習を見てくれるのでクラブに行くくらいならば学校で練習した方がよほど効率がいい)

が、今日はコート整備の為テニス部員(というか業者以外)は立ち入り禁止。
丁度いいので、オフにしてゆっくりと久しぶりの休暇を味わう予定だった。

コートをでても部長としてやる事は多いので、それを処理するのにも丁度いいだろう。


「愛する恋人のために付き合ってやろうとかそんな方面にはいきませんか?」

「いきません」

俺の思考を中断して投げかけられたアホな質問に自分でもすがすがしいくらいきっぱり返すと、やはり忍足さんはアホみたいに人でなしだの鬼畜などと騒ぎ始めた。

やめろ、人聞きの悪い事を言うな
こんな寒い日に屋上なんかで食事をするのは自分達くらいだろうが、誰が何処で聞いているのか分からないんだぞ。

俺はともかくアンタは何故だか分からないが‥何かと目立つんだからな。

あぁ、こんなのがクールでかっこいいだの、あの冷たい視線でけだるげなのが素敵だの
女子はこの他人の何処を見てそんなことを言っているのか1度問いただしたい。

「いこうや!!」

「イヤです」

「いけ!!先輩命令!!」

「くだらない指図に付き合っている暇はないし、意味も見出しかねます」

「日吉のいけず‥‥可愛いくない」

「可愛くなくて結構です」

「やっぱり可愛くない」

「俺が可愛かったら気持ち悪いでしょうが」

「いや、笑顔で先輩大好き、なんてハートマーク付きで可愛い事言ってくれたらめっちゃときめくで」

「あー先輩大好き、先輩大好き」

「何やその棒読み、愛がないにも程がある」


あ、今度は本気で凹み始めた。

まったく鬱陶しい人だ。

そんな体育座りで床にのの字を書くなんて今時マンガでもやらないぞ。
なんてベタでアホくさい行動をとる人なんだ。


一番鬱陶しいのは、そんな忍足さんを見捨てて屋上を出ていけない自分だけど。


そろそろ、気付け。


本気でイヤなら、ここに居るわけがないんだから。


その程度には気に入ってるよ。
そんな自分が腹立たしくてしょうがないけど。


とりあえず、今日は無理だけど、次の休みには何処かに付き合ってやるよ。
ついでに俺の安らかな休憩時間を邪魔した代償を貰わないとならないしな。


まぁ、問題はその一言をどうやって忍足さんに伝えるかだけど。
この言語の通じない地球外生命体は、そんなことを言えばまた意味の分からないこといいながら調子に乗るに決まっているのだから。


本当に誰かこの地球外生命体の操作方法について書かれたマニュアルをくれ。


覚えるくらいの努力はするからさ。




自分で作れ?

無理。

この人について正確にデータが取れたためしがないから。


忍足さんに関してだけは測定不能なんだ。




何故だかはくやしいから絶対に認めないけれど。
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