「なんていうかさー着物っていうか浴衣のエロさって格別だよね。うなじとかホントたまんないよ」 先生、質問です。 どうして教室のど真ん中で、官能小説(良心のブックカバー付き)読みつつこんなセクハラ発言かます男が、 「幸村君て儚げで繊細な感じで素敵だよね」なんて言われて女子に大人気なんでしょうか? 世の中理不尽すぎて泣きそうです。 青春DREAM−DAYS 「まぁ、顔だろうな」 「ぶっちゃけすぎです。柳先生」 屋上での問答から数週間。 柳は何が面白かったのか、ちょくちょく俺のところに顔を出すようになり、 今では顔をあわせれば「お茶でもどうですかー、時間ありますし。」「そうですねーいきましょうかー」なんてやり取りをするようになった。 今日も例によって例のごとくばったり図書室で遭遇してしまい、自動販売機前でだらだらと無駄話をしている最中である。 「にしても不公平じゃね?あれだよ、お前のとこの眼鏡の‥」 「柳生か?」 「そうそう、その柳生って奴がブックカバーをつけてからは一応隠すってことを覚えたは覚えたみたいだけどさー エロ本読んでることなんざ周知の事実だろ?そんな堂々と教室でエロ本読む奴繊細って言うか」 「だから顔だろう。顔の良しは7難を隠すんだ」 「人間大事なのは中身って言うのは幻想ですか?」 「まぁ、幻想だろうな」 特に俺達くらいの年頃は。 なんて柳が涼しい顔で悟ったように呟いた。 なんと言うか、発言が重くてイヤだ。 どう贔屓目に見ても恩恵を受けて来た組に入るくせに。 「これだから顔のいい奴は」 「羨ましいか?」 嫌味を込めて、ぼそっと呟くとふふんと鼻で笑われた。 流石いつも女子が群がっている部のレギュラーは違うぜ‥。 と、心の中でハンカチを全力で噛みながら敗北宣言を行う。(BGM:女々しい野郎の歌) 「別にー俺は顔じゃなくて中身を見てくれる子を探すから」 そんなこと悔しいから絶対に言いませんけどね。 ちくしょうなんの恨みもないけど、 明日テニスコートの上だけに軟式庭球のボールが振りますように。(奴らのいるテニス部は硬式なので痛い上に使えない) 「‥‥頑張れ」 「なんだよ、その沈黙は」 「お前こそなんだ、今日はいやに絡むじゃないか。」 「実は先ほど3組の坂滝さんに呼び出されて」 あぁ、さっきよりニヤニヤ度が2.5割り増し(当社比)になってます。 柳の顔を見ながらこれはばれてるんだろうなと思いながら 先ほど起きた、男としてはショック過ぎる出来事をぼそぼそと話していく。 自分のマヌケさ加減を改めて人に話すなんて傷口に塩を塗りこむような作業は あまり積極的にしたくはない。 が、もしかしたら自分中で溜め込んで傷口が膿んでしまうよりましなのだろうか。 そんな風に自問自答しつつ話すことのなんとむなしい事よ。 「ふむ?」 「こんなものを」 といって俺はポケットの中に突っ込んでおいた、花柄の封筒を柳に渡す。 「どう見ても恋文だが‥お前坂滝さんが好きだったのか?」 珍しいものでも見るように封筒をまじまじと眺めながら柳が問いかけてきた。 恋文‥もといラブレターなど柳クラスであれば日常茶飯事で受け取っていそうなものだが。 あれか?俺が持ってるから珍しいのか?そんなオチですか? 「いや」 そんなねたみや嫉みを極力表に出さないように気をつけつつそっけなく返事を返した。 一応な一応俺にだってプライドっつーもんがあるし。 「というと恋の仲介役に使われて面白くないと‥ついでに幸村君繊細そうだからいきなりこんなもの渡したら驚かせるかなと思って、 とでも言われたか」 「正解、スーパー仁君をあげよう」 「いらんわ。そして幸村に渡しに行ったところいらないから返しておけといわれた、違うか?」 「違わん。つかなんで知ってんだ?見てたか?」 「俺を誰だと思っている。この程度の推察は朝飯前だ」 「左様ですか」 もう、ぐうの音も出ませんよ。参謀殿。 言外にお前が分かり易すぎるんだという声が聞こえたような気がするが気のせいにしておこう。 「で、どうするんだ?」 「どうしましょうかね」 「そういやアイツ「果たし状なら全力で受け取るんだけどね。」とかまた意味のわからない事言ってたぞ」 しかもかなりいい笑顔で。 なんつーか機嫌いいんだか、悪いんだか分からん笑顔だったな。 「時々何一つ挑まれていないのに、野球部に仕掛けに行こうとするからな」 「なんじゃそら?俺か?俺に喧嘩売ってんのか?」 「さぁな、とりあえずテニス部と野球部の平和の為に浴衣着て幸村と夏祭に行ったらどうだ?」 「ってうちのマネージャーに言ったらいいのか?」 「‥‥マネージャーが血祭りに上がってもいいならな‥」 「‥浴衣は着ないけど誘ってはみます」 最初から一緒に行きたいと言えとの突込みはかろうじて飲み込んで、俺なんか誘わなくてもよりどりみどりだろうに。 とぼやいたら柳に鼻で笑われた。 ムカつく。 |
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