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「ジャッカルー超誕生日おめでとー!!」 「でとーー!!」 そんな絶叫と共に教室に鳴り響くクラッカー。 頼むから大人しくしててくれ。 どうせ後始末をするのは、俺なのだから。 そして世界を見失った 「ジャッカルーどうしたんだよ、誕生日なのにテンション低いぜ?」 「あっ、もしかして俺の知らない間にブン太か赤也の馬鹿のせいで朝から真田に怒られたとか?」 「馬鹿言え!!何で赤也ならともかく、俺がジャッカルに面倒かけてるみたいな話なんだよ!!」 「かけてるじゃん」 「かけてません。俺はむしろいつもジャッカルの面倒を見ています」 「どの口がそういう妄想を吐いてるわけ?」 「あぁん?何が妄想だって」 ブン太、幸村。 お前ら二人、漫才なら教室の外でやってくれ。 否 贅沢は言わない。 俺の目の前でやらないでくれ。 言葉を挟む間もなく、言い争いを続ける2人を横目で見ながら俺や俺の机の周りで これでもか、という勢いで存在を主張する色鮮やかなカラーテープを回収する。 何故だろう? 不思議な位いつもと変わらない。 今日から15歳。 ここ日本では、その昔15歳とは元服の年であり、他とは違う特別な祝いなんかをしたらしい。 その法則に則れば俺は今日から大人のはずで、もっとこう静かな一日を過ごしても良いのではないだろうか。 そんなに贅沢な悩みでもないはずだが、どうしてだろう。 立海というかテニス部に入学してから3年目。 このささやかな願いが叶えられたためしは無い。 「あーーージャッカル先輩、はっけ――――ん!!」 むしろ悪化している。 「あ、赤也てめー今頃何しに来てんだよ。ジャッカルの誕生日を祝うのは俺が先だからな」 「何言ってるのブン太。俺に決まってるだろう?この俺に挑戦しようだなんていい度胸だね」 「そんなの超ずりぃッス!!俺だって祝いたいんですから!!」 「後輩のくせに生意気なんだよ、お前は。ジャッカルを祝えるのはダブルスのパートナーでもある俺だろぃ」 「はっ、それならテニス部っていうかこの世の最高権力者である俺だろう」 「何言ってんスか!!見慣れたむさい顔より可愛い後輩に祝われた方がジャッカル先輩も嬉しいはずです」 「誰がむさいだって‥‥?」 「いい度胸だな、赤也?」 「うわぁ、ちょ、つい口が滑ってホントの事言っただけじゃないですか?心が狭いですよ、先輩達」 「本当のことなんだ」 「へぇ、つまり赤也は俺たちのことをそんな目で見ていたんだね?いつも」 ブン太、幸村に加えて赤也まで集まってきて、 案の定、収拾がつかなくなってきた教室。 というか俺の席の前。 遠巻きに見ているクラスメイトの視線が痛い。 早く黙らせろから、可哀想に、に視線の種類が変化していっているのが痛い。 赤也。 素直のなのはいいんだがどうしてこうも迂闊なのだろう? ブン太。 赤也が死ぬからそろそろ力を緩めろ。 幸村。 何か怖いから、その黒いものをしまえ。 「ジャッカル君。大変ですね」 「おう、柳生か」 3人の言い争いを眺めながら、この事態をどう収拾すれば真田に余計なお小言を貰わずに澄むか(何故か俺の周囲で揉め事が起きると俺が説教される) を考えていると、何処からとも無く穏やかな笑みをたたえた柳生が現れた。 柳生ならきっとこの事態の沈静化に協力してくれるだろう。 眼鏡の逆光ぶりが、後光のように見えるぜ。 そんな風に地獄に仏にあった気分で柳生を眺めていると、柳生の頬が段々赤みを帯びてきた。 何故だろう?そんな羞恥を喚起させるほど眺めていたのだろうか。 日本人はシャイな人間が多いと聞いた事があるから、自分にとっては普通でも柳生にとっては尋常ではなかったとか? 「‥‥ジャッカル君。そそそその様に熱いまなざしで私を見つめるのはやめたまえ」 「は?」 え?もしかして柳生も壊れた? なんかこういう反応を、昼ドラかなんかで見たことあるような気がするんだけど。 どうしよう、柳生お前もか‥‥!! 「仁王君。貴方また私の振りをしてそんなことを―――!!!」 柳生まで、壊れるとは予想もしてなかった俺が頭を抱えていると壮絶な絶叫と共に 今俺の目の前で頬を染めている人物と同じ容姿をした人間が現れた。 「はい?」 仁王、柳生。何でそんなところばっかり気が合うんだ。 あまりにも怒涛の展開に脱力してしまった俺は、 そこのD1。お前ら本当に何がしたいんだと、そんな想いを抱きながらもマヌケな声で返事をするのが精一杯である。 「ジャッカル君。私が本物の柳生です。貴方なら分かってくれますよね?」 「何を言っているのですか!!私が本物の柳生です。ジャッカル君をたぶらかすのはやめたまえ」 「何言ってるんですか。私です。私とジャッカル君の愛の語らいを邪魔しようなどとはいくら仁王君とはいえ許しませんよ」 「それは私の台詞です。今日こそ容赦はしません。ジャッカル君は私と一生を共にすると決まっていえるのです」 「それは私です」 全く同じ見た目をしていても何となくどっちがどっちかは分かるのは、 それだけこいつらとも濃い付き合いをしてきたせいなのだろう。 2人が何を考えているかは未だに理解不能だが。 あぁ、仁王はなんで柳生のふりして、柳生と俺争奪戦みたいな意味のよく分からない事をしているんだか。 もしかすると、このことが知れたら、俺が真田に殺される事が分かった上での嫌がらせだろうか。 仁王ならそれくらいやりかねない。 仁王は結構なドSであり全てにおいて判断基準はどちらがより面白いかだ。 柳生も仁王と同じで意味の分かりかねる行動をよくとるから恐らく仁王とどっこいどっこいの理由だろう。 右を向けば幸村とブン太と赤也が言い争いをし 左を向けば柳生と仁王が掴みかからん勢いでお互いを罵倒している。 あぁ、俺に安らぎの時は訪れないのか? クラスメイトの可哀想なものを見る目ますます色濃くなってきて 廊下からは真田と柳のモノらしき足音まで聞こえてきた。 また、騒がしくなるな‥‥と目の前の光景から目をそらして窓の外に広がる眩しいほど青い空を見つめる。 誰か、俺の誕生日を静かに祝ってくれ。 そう、真剣に祈りながら。 |
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