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朝から無駄な精神力を使用してしまったため特に何もしていないはずなのに激しい披露が俺を襲う。 とはいえ無言は肯定とみなす男なので、はっきりと拒否をしておかねばならない。 「はぁ!?そんなんでいい訳!!だから 『八坂君てーそこそこカッコいいのに華がないよね。つーか野球部自体地味じゃん?キャハ☆BY女子』 みたいな評価されるんだよ?」 案の定聞き入れては貰えないみたいだが。 本当に他人の話を聞かないな、お前は。 にしてもアレですか、そんな余計な話しどこから仕入れたんですか? どうせお前みたいに見た目と中身がギャップありすぎてワイルドで素敵‥BY女子。 なんて評価とは無縁の男ですよ。 全くもって要らないお世話である。 「いいよ。別に注目されたくてやってるんじゃないし。そういう色物担当はテニス部に任せる」 そう、別にいいのだ、俺の良さを認めてくれる女の子と付き合うから。 断じて負け惜しみなどではない。断じて。 幸村率いるテニス部の連中のようにのように破天荒な行き方は所詮俺のような凡人には無理だ。 というか、したくない。 幸村と付き合うようになってから普通であることをありがたく思えるようになったことは俺の大きな進歩だと思う。 どこかの歌ではないが、普通の偉大さを学んだ自分を褒めてやりたい。 「何言ってんの!!大和男子たるもの女の子にモテたい‥あわよくば‥で○○で××な‥」 「あー朝から下ネタは胸焼けがするから止めようか‥」 「ココは乗ってこいよ!!」 死んでも嫌だ。 コイツが下ネタをところ構わず話そうが、エロ本読もうがとくに咎められないどころか あっさり受け入れられてしまうのは、あっけらかんとした態度もそうだが コイツの繊細に風貌による影響が大きい。 残念ながらお前の目の前にいる男は見た目も(希望を込めて)普通の中学生男子だ。 そんなものに乗っているところを目撃されでもしたら学校に来れなくなってしまうではないか。 俺が若干意識を異次元へ飛ばしていることを知ってかしらずか、幸村はますます熱くなっている。 「たぶん、ここに誰がいても乗ってこないと思うぞ?」 というか絶対。 くだらないといわれようが、何だろうが男の80%は見栄で構成されている。 堂々と乗ってくる神経の図太いのはそうそう居まい。 いくら興味はあろうとそうおいそれとは乗れない微妙な男心を分かれ。 お前も男だろ。 「柳は乗ってくるよ」 「訂正する。テニス部の人間以外は、乗ってこないと思うぞ」 お前らは例外なんだと、暗に示してみれば幸村が不満そうにこちらを睨みつける。 こんな顔しても対して嫌悪感を与えないのだから男前というのは本当に得だな、と改めて感心する。 俺が同じことやったら、気持ち悪い等の暴言を吐かれつつ袋にされるぞ、絶対。 「えーー何それ。朝から下ネタなんて男の子の楽しい特権じゃないか‥はっ!!もしや、八坂‥‥」 「何だその可哀想なものを見る目は」 「女の子に興味がない人とか」 「お前ちょっと黙れ」 本当に黙れ。本気っぽい顔でこっちを見るな。 こちらの方が何事かと驚く勢いで、大げささに恐れ慄きつつ 幸村はこちらを何か変なものでも見るような眼で見ている。 失敬な奴だ。 それにしても、他の奴ならば、一般市民である俺は落ち込むところであるが(誰にも嫌われないように、不快にさせないように生きて行きたいというのは恐らく俺だけでなく、大部分の人間が思っていることではないだろうか) コイツにこんなところ態度を取られたところで、特にネガティブな感情が湧かないのは 幸村がそんなことぐらいで俺と距離を置くわけはないだろうという信頼のなせる技か そんな些細な事はぶっ潰して進む、幸村の破壊力への慣れか。 「だって、下ネタには昼夜問わず乗ってこないし、彼女作る気配もないしさー」 どちらにしろ、常識で測れる人間では無いと言うことだろう。 今さらだが。 ただ、腑に落ちないことが一つ。 コイツこんなに他人の恋愛話になんか乗ってくる奴だったっけ? 「俺はお前と違って恥じらいがあるから教室でエロ本は読めないし、そもそも君達と違ってモテないんで 作ろうと思ったところで簡単に出来ないんです」 「昨日告白されてたじゃん。あの子は?」 「何で知ってんだよ?何処で聞いた?まぁいいけど‥断った」 情報源は柳かな?それとも仁王? 昨日の今日で、しかも呼び出しを受けたのではなく 放課後いきなり捕まって告白されたのだ。 お前の独自の情報網が怖い。入手が早すぎだ。 無意識に溢れ出るため息をかみ殺しながら顔を上げると 今にも爆発しそうな勢いで爆笑を堪えているかに思っていた幸村が 幸村が呆然とした顔でこちらを見ていた。 「ちょ‥何でさ?もったいない」 いつもより反応が鈍い。 というか、こいつでも驚くことあるんだ。 あまりの衝撃にそんな風に思いながらぼんやりと幸村を眺めていると 幸村はぼんやりとこちらを居見ていた眼を突然を見開き俺に掴みかかってきた。 これはそんなに驚くことだろうか? お前も同じ様な理由で、しょっちゅうごめんなさいしてるくせに。 「別に‥ただ良く知らない子だったし‥好きでもないのに付き合うとか言うのも失礼だろ?」 「かぁー青いね八坂は。いい人生経験が出来るチャンスだったのに」 「つうか他人の前にお前だろ?自分が作れ」 何ニヤニヤしているんだお前は。さっきまで呆然としてたくせに復活が早すぎだろ。 幸村は口では勿体無いと言いながらおれを攻め立てているくせに、 先ほど大好物のエロ話をしていた時よりもイキイキといい笑顔を浮かべてこちらを眺めている。 本当に読めないな、幸村精市。 「にしても驚いたり、たきつけたり‥お前俺に何を期待しているんだ?」 「いや俺八坂に彼女出来たらやりたいことあってさ?」 「は?俺?」 「うん。他人の恋路を邪魔する奴は〜っての一回やってみたかったのに‥」 「具体的に何する気だ、お前‥」 非常に嫌な予感がしながらも、好奇心に負けて先を即してしまう。 瞳輝かせすぎだろお前。 俺のほうが先に彼女が出来そうだったのが、ポシャったのがどれだけ嬉しいのか知らないが はしゃぎすぎだろう?幸村。 俺に彼女が出来ないのを喜ぶくらいなら、お前がとっとと彼女でも何でも作れ。 俺よりは確実に可能性が高いぞ。 「うーん、軽く説明すると運命の出会いを果たし付き合うようになった八坂太郎とA子。 しかし、八坂の大親友幸村もまたA子を好いていたのだった。 最初こそ2人の仲を祝福する幸村だったが、A子から八坂絡みの話しをされるたびに心が軋んでいく‥。 そして、我慢の出来なくなった幸村はとうとうA子を力ずくで我が物に!! 心身ともに傷つき二人の下を去るA子。親友の裏切りとA子の失踪‥ 同時に二つのものを無くし廃人の様になってしまった八坂は、幸村への復讐を近い、 彼を苦悩の渦へと突き落とす為に立ち上がるのだった‥」 「そうか、そんなのやってたな、昼に」 「面白いよねー"ドキサバSWEET"」 彼女より昼ドラですか貴様。 幸村はそういうと満面の笑みで現在奥様にドロドロとした濃い世界観が人気の昼ドラマ"ドキサバSWEET"について延々語っている。 おいおい、カップルバスターズは何処に行った? 朝からくだらない事に巻き込まれている事を噛み締めながら 思わず遠い空を仰いだ。 あぁ、テニス部の奴らは何をしているのだろう? とっくに朝練が始まる時間だろ。 お前らくらいしか止められないんだから、何とかしに来て下さい。 |
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